綿矢りさ/夢を与える

夢を与える

夢を与える

話:★★★★☆
2007年2月28日初版発行
 ひとりの女の子が『半永久』というCM契約期間のもと、人生を安売りした破滅小説です。冒頭にCM契約の設定が敷かれてからというもの、どういう不幸が舞い込むのかという嫌な気持ちで読み続けることになりました。非常に苦痛でしたが、賞に絡まない綿矢さんの3作目ということで無理してでも読みきるつもりでした。途中、案の定その女の子は壊れ始め(よく保ったほうだと思いますが)、どんどんつまらない人間に落ちていきます。
 男性と関係を持つようになってからのエピソードで、奥を突かれて気持ちよいと夕子が告白するボルチオ性感に関する記述があります。普通は考えないことなんですが、綿矢さんもこういうことを知識あるいは経験として持っているんだなぁと思わず考えてしまいました。まあ男の私でも知識で知っているんだからそれだけ一般的な知識になったんでしょうなぁ。もっとも22歳なんだから何をやってても不思議じゃないんですが・・・。しかし、男に夢中になる様は実際かなり平凡で冷めました。むしろ暴露された瞬間はすっきりした残酷な気持ちで迎えられたし、こういう舞い上がった女を自分がどれだけ嫌っているかを知ることができた点ではおもしろい小説だったと思います。
 総じて、若くして芸能界に関わり若いうちに身を滅ぼすというお話は不思議と誰もが知っているネタだけに、小説としては新しいのかもしれないが正直新鮮さが足りないと感じました。また、変に作者の視点(意識レベル?)が高くなり、若い年齢だから書ける感性みたいなものが感じられなかった点は期待していたものと違う作品でした。たぶん女性作家なら年齢を経ても書ける作品ではないでしょうか。それでも、プロ作家としての意識は感じられたし(決してサービスシーンのことを言ってるわけじゃなく)、ひとつの作品として最後まで読ませるレベルであったと思いました。まだ自分の中ではこういう作品を書く人だと定まったものがないのですが、今後はその点にも注目していきたいと思います。