杉井光/神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

2007年1月25日初版
話:★★★★★、絵(イラスト:岸田メル):★★★★☆
 素直にいい小説だと思いました。ちょっとかっこつけた科白廻しもプラスに感じました。ふざけすぎない雰囲気もかなり好きでした。
 杉井氏の作品はこの本が初めてになります。第12回の電撃小説大賞の銀賞作品というのも買った後に帯に小さく書いてあったのを見て知りました。じゃあ何故買ったかといえば新刊コーナーに置いてあったから、というのが7割の理由、2割がタイトルに惹かれたため。そんな軽い動機で買った作品でしたが、現時点ではラノベで一番好きな作品になりました。
 内容ですが、転校生のナルミ(♂)はクラスにも溶け込まず、ひとりきりのパソコン部で下に何も履いていない女の子のCG絵を描きながら日々を過ごしていた。ある日そこに彩夏という女の子が声を掛けてきたが自分が所属する園芸部もひとりなのでこのままだと廃部にされてしまう。それで、お互い入部しない?との提案。もちろんナルミは面倒がるが、もちろん弱みを握られている彼は言いなり。・・・こんな調子で始まるストーリーはこの後の展開を全く想像させませんでした。ラノベらしい(?)個性的なキャラが出揃った頃、きな臭い世界との接点が見えるやいなや事件は一気に展開し、そして悲劇が起こります。ナルミは決して強くはないし、むしろ弱いけど、弱すぎないところは好感が持て、読み手として気持ちがリンクできました。表紙絵のニート探偵アリスも必要な人物ではあるのでしょうが、本作品の主人公が最初から最後までナルミの位置からぐらつかなかったのは非常に良かったと思います。いくつかあった謎解きの最後は感動的でもあり、悲劇で終わらせずちゃんと希望の芽を与えて話を終わらせた点も読後感がよく良かった点でした。
 ということで、とりあえず杉井氏の既刊を早く読んでしまおうと思いました。・・・うっ、巫女ものかぁ
 最後に挿絵ですが、きれいでやさしい絵なので嫌いじゃないのですが、少し平凡かと。アニメっぽいキャラ付けにする必要はないですが、もう少しサブキャラがひとめで区別つくような個性を絵にも与えてほしかった気がします。ややリアル系の絵柄なので難しいとは思いますが。ラーメン&アイス屋のミンさんのサラシはよかったです(*^-^*)。