監督:崔洋一、主演:松山ケンイチ/カムイ外伝

総評:★★★★☆

 昔読んだ原作の記憶はもはや定かではないものの、カムイの技をしっかり憶えていたのは少しだけ驚き。思っていた以上に印象深い作品だったのかもしれない。映画は原作の第二部「スガルの島」らしいが読んだ記憶はなし。ただカムイ外伝の世界観や雰囲気に惹かれていたことと、漫画原作の映画に出演が多い松山ケンイチ氏の演技にも興味があって観賞することに。夜8時頃の回であったが結構映画館での人はまばらでほぼベストのポジションで観ることができた。観客のマナーも良く、かなり集中して観ることもできた気がする。
 内容は悪くなかったと思う。ただ余計なことを考えてしまったのも事実。例えば、抜け忍であるカムイは自分から敵の命を奪いにいかないようにしているようだが、絶え間なく厳しい攻撃を仕掛けてくる追忍を結果的に100人以上倒してきたとのこと。しかも大頭(おおがしら)と呼ばれる伊賀忍者の頭領自らが攻撃に参加してくることもしばしば。一度でも抜けるのに成功したら示しがつかないので必死になるのはわかるけど、100人以上の忍者を頭(かしら)を含めて投入してたら、他の任務は何も果たせないんじゃ?と思う。原作には説明があったのかもしれないけど、そもそもこの時代の忍者って相当暇だったのか。でも、カムイ自身はやりたくない任務を何度もやらされて、それが嫌で抜けたんだよなぁ。う〜ん。
 それから、これはこの作品だけの話じゃないんだけど、相変わらず香港映画お得意のワイヤーアクションは観ててしょぼい。重力や反動を感じるリアリティが全くなく、体重が消えたように、すーっと飛び上がり、加速や減速もない動きはいかにも糸で吊ってるのを感じさせるので興ざめもいいとこ。ハリウッド映画でも多用するようになって久しいですが、あの演出の何がいいんだろうと思う。正直苦笑してしまう。CGで格好良く処理できないんだろうか。例えば森の中で追忍たちと戦うシーンは見せ場のひとつだったと思うけど、10年以上前ならまだしもワイヤーアクションを筆頭に無重力のようにくるくる回る安っぽいCG処理は最近の映像技術により期待されるレベルからはかけ離れていた出来だったと思う。
 映画の善し悪しとは直接関係ないけど、エンディングの後に残ったものは泣きも笑いもない微妙な感情だけ。もっともその感覚は原作からも感じていたわけだから、忠実に作られていたともいえる。そういえば、お色気が全然なかった...。人肌でカムイを暖めていたシーンも健全そのものだったしね。