間瀬元朗(ませもとろう)/イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス) 1−3巻
イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)
- 作者: 間瀬元朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/08/05
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イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (2) (ヤングサンデーコミックス)
- 作者: 間瀬元朗
- 出版社/メーカー: 小学館
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- 作者: 間瀬元朗
- 出版社/メーカー: 小学館
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この本の世界では「国家繁栄維持法」という法律があり、国民全員が子供の頃にナノカプセルが注射され、誰が対象かわからないまま、大人になる前にそのカプセルにより死んでしまうというもの。これにより、いつも死を意識するから「いつ死んでもいいように一生懸命生きる」ようになるというのが設定。正直1話めのこの設定を読んだ瞬間に思ったのが、「誰が死ぬのかわからないし、さほど高確率で死なないのだったら、誰も死を意識して頑張ったりしないぞっ」と。もちろん死ぬ10年以上も前に知らされても誰もが頑張ろうとは必ずしも思わないと作者は考えたのでしょう。
でもね、いるんですよ。心臓欠陥などでxx歳まで生きられないと知って頑張る人は。むしろ、1ヶ月に2,3人が対象となるような確率で、死ぬ1日前に知らされるんじゃぁ、誰も「いつ死んでもいいように頑張る」わけがない。
簡単な計算で、毎年100万人が生まれているとしたら、3万人に1人が死ぬ確率となります。この3万人の1人という確率がどんなものか検索してみると、
-性同一性障害(男性の場合。女性は10万人に1人)となる確率
-内臓逆位(全ての内臓が左右逆に位置している人)の発生頻度
-色覚異常(色の違いが明暗の違いにしか感じられない病気)の発生率
-運動ニューロン疾患(体の筋肉に力が入らなくなり呼吸もできなくなる病気。筋萎縮性側索硬化症(ALS)はその代表例)にかかる割合
-遺伝性痙性対麻痺(反射が過大になり、脚の痙攣、ひきつけがおこり、徐々に歩行困難になる病気)になる確率
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などなど(ちょっと興味深くなって調べてみた)。いくつか耳にした病気もありますが、実際にその病気に闘っている人がいるのは事実としても、どれだけの人が3万人に1人発病すると聞いていたとして、自分がそうなると思うだろうか。
死をテーマにしたストーリーとしてはあまりに設定に説得力が感じられないため、1話目(もちろん上記病気発症確率を調べる前)でしらけてしまいました。あぁ、3巻まで買うんじゃなかったと。まあ、死がテーマになるとそれなりのドラマが表現できるのですが、1巻、2巻ときわめて平凡。もっと考えさせられる本は世の中に五万とあります。ただ救いは3巻目の最後の最後、まさに最終ページ。ちょっと、うるっとしちゃいました。オレもいい兄ちゃんで頑張るよ、とリアル妹は何の病気もありませんが無理矢理自分を重ねてみたり... ^^;
結論、実験マンガとしては価値を認めますが、もうちょっと練りこんでから始めてほしかった。そもそも長期時限殺人ナノカプセルの管理などできそうもないし、3セクション程度の情報分散で死亡者の秘密保持などできるわけもない。しかも死を告げるイキガミの配達人には2週間前に連絡が来ることもあるとのこと。天下り、カラ出張、カラ残業など何十年も平気な顔で続けている官公庁の人間にまともな情報管理ができるとは思えん。自分の子供だけは対象にならないよう調整とかするんじゃないの?みたいな。そういうのも違反したら死罪になっているのかもしれませんが。
リアリティのない設定に対して何をむきになっているのやら。--;ゞ 正直、こういう安直な発想で死を語るなっ、と怒ってるんですよね。理不尽な死に方をした肉親、友人を持つ身としては。