海堂尊(かいどうたける)/ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

 1作めで注目し、2作めで不安にさせ、3作めで見切りをつけさせた作家でしたが、再び注目せざるを得ない作品を発表してきました。やはり題材に依るところも大きいと思いますが、救急医療の現場のスピードと緊張感を読み手に感じさせ、難しい倫理の問題にも上手いキャストの割り振りによって、話に引き込まれるままに読み終わりました。速水(救急センター部長)すげぇ〜っ、と思わず口に出しそうな活躍ぶりで、影の主役 白鳥も今回はちょっと顔を出した程度で終わりました。それでも、このシリーズを読んできた私としては沼田(倫理委員会の頭でっかち)のばかを言いくるめてくれるのは白鳥しかいないという期待にしっかり応えてくれたので満足してます。姫宮(白鳥の部下の変な女)を含めてオールキャストで描き切った満足感が作家にもあったんじゃないでしょうか。さすがに不評の声は伝わっていたはずなので。
 新作を発表するペースは毎回早くて、この本も前の作品から半年も経っていませんので、これなら一時離れた(はずの)読者も戻ってくるのではないでしょうか。ただ先ほども書いたように題材に左右されている感じも強いので、バチスタや救命救急以外の舞台でもおもしろい作品を発表されるのを楽しみにしたいと思います。