ローリー・リン・ドラモンド/あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 久しぶりの翻訳本(翻訳:駒月雅子)です。アメリカの警察で活躍する女性警官たちの話を描いた短編集となっています。かなり衝撃的な内容もあり、現場の緊迫感、銃の恐ろしさをリアルに感じることができました。翻訳もよかったのかもしれませんがやはり原文の出来がよいのでしょう。
 頻発する銃の乱射事件などアメリカの殺人事件は銃のため簡単に被害が拡大する怖さを感じていましたが、当然その中で日々戦う警官が決して正義感だけでは乗り越えられない恐怖と戦っていることも考えさせられる本でした。同僚のアメリカ人(女性)に以前「銃を使ったことがあるの?」と聞いたら、とんでもないと必死に否定されました。彼女はワシントン出身で比較的裕福な家庭で生活していたようで一般的な家庭ならアメリカ人だからといって銃など使わないのだと知りました。銃を持つ権利はあっても、実際にそれを使おうとする層はどこか社会的にストレスや見えない恐怖に逆らおうとしている人たちであり、それは、自分をコントロールできない危険な人ほど銃を持っているのではないかと想像し怖くなったことを思い出しました。
 この本の難点をいうなら、違う女性の話で構成されてテーマが似たものを持っているため、ややめりはりがなかったように思いました。短編集なんだけど、同じ警官の話なので、何か事件などでつながりがあるのかと期待してしまい、最後まで読むとそうじゃないことがわかり、がっかりしたということです。