きくち正太/おせん(13) (イブニングKC)

おせん(13) (イブニングKC)

おせん(13) (イブニングKC)

 今日会社の帰りに書店に寄ったら早売りしてました♪ 第13巻です(表紙絵が見つからなかった)。
 出版社は日本美の薀蓄(うんちく)本として売りたいのか帯にいろいろ書いてありましたが、何がいいって、マンガとしておもしろいんですよね。もちろん、自分の想像を超えるいろんな日本の良さを教えてくれるストーリーも大好きだし、マンガちっくな天然ぼけと気風のよさが魅力のおせんさんも欠かせませんが、読んでて楽しいんですよ、単純に。脇を固めるキャラもおもしろいし、そうそう、とにかく「うんめぇ〜〜」とうまいものはうまいと多く語らず絵で魅せようとしている点もそうだし、ほんと、相当な取材をしていると思うんですが、読むテンポがあまり遅くならないんですよね、某食材漫画と違って(それを悪いとは思ってないですが)。別に味や食材に関する解説がないわけじゃなく、料理薀蓄本っぽいところはあるんですが、おせんさんの場合、教えてやろうという高みからの言葉じゃなく、好きで好きでしょうがなくて、ずっとこだわってきたからついつい人に話したくなる、人柄から出ている科白だと感じるんです。実際私も自分のこだわりがある話ってついつい(相手が引いてても)話したくなる時ってあるし、そんなところは共感しながら読んでました。
 そうそう、それでこの13巻です。きくち氏の漫画は少年チャンピオンでの連載「三四郎2(さんしろうのじじょう)」の頃から読んでいますが(単行本は100冊くらい出てる大ベテランです)、まだまだ13巻なのでもっともっと連載を続けてほしいと思います。今回の巻ではついにおせんさんの焼き物の師匠が登場し、しかもさっきの話と矛盾しますが、巻末の話で、ある陶芸師(人間国宝候補)の作品をおせんさんがクズ呼ばわりするシーンがあるんですよ。確かにその陶芸師の器は料理への配慮に欠けた一面はあるのかもしれませんが、少なくとも私が知っていたおせんさんは居なくなった気がしました。こういう科白を言わせるようになると、もう作品として終わる時期なのかもとちょっと思ってしまいました。作者としていろんなメッセージを持って作品をより高い完成度に持っていくエネルギーとするのはいいことなんですが、主人公が作者そのものになってしまうのはいかがなものかと思います。それと、髪型は元に近い形に戻してほしいです...。なんか別のマンガを読んでいる気になってしまいました。おもしろかったことには変わりありませんが。