支倉凍砂/狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/08
- メディア: ペーパーバック
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何がおもしろいって、ロレンスとホロとの言葉の駆け引き、というか掛け合いでしょう。恋人同士のような甘ったるいものでもなく、単なる旅の連れという乾いたものでもなく、大人の男と長年生きてきた賢狼との間で超えないように気遣う心の壁を少しずつはがしていくかと思いきや、見事な誘導で心の内までさらけ出したロレンスの動揺っぷりに、声を出して笑い出してしまう楽しいやりとりが満載です。しかも何気に触れ合うシーンが増えており、たとえば物語後半の1シーンである『解きかけた腰帯が(中略)お礼とばかりに尻尾をこすりつけてくる。少しいたずら心でこっちから触ろうとしたら、あっさりとかわされた。』なんかは(実に私の勝手な妄想なんですが)なんともいえない良い雰囲気です。二人の関係は本編でも順調に進展しており、どういう結末かは言いませんが、やはり二人のファンとしては嬉しい展開でした。
ほかにもこの本に登場する酒場の娘のやりとりや、この話の核となるエーブという商人とのやりとりも実にロレンスはうまく立ち回っており、ホロの老練さを確実に自分のものにしている気がします。穿った見方をすれば、少々芝居がかった会話かもしれませんが、この世界での商人なら、こうであってほしいというイメージから外れておらず違和感を感じることはありませんでした。
今回のエピソードも最後までどういう展開になるのか読めず、先が知りたい欲望のままに一気に読んでしまいました。今後どういう展開になるのかますます楽しみなシリーズです。
ところで、この作品が今度アニメ化されるようです。帯にアニメのキャラクタデザインによるホロの絵がありましたが、ちょっと清楚すぎるかなぁ。その点、文倉十(あやくらじゅう)さんのイラストには笑顔の中にどこか抜け目なさを感じさせる気がしてイメージどおりです。個人的にはアニメでどこまでおもしろさを伝えられるのかと懸念もあるのですが、原作の認知度が高まるならそれはそれでいいかなと。