角田光代/八日目の蝉

八日目の蝉

八日目の蝉

 第5版を購入。読んでいる途中は、正直、自分はなぜこんな話を読んでいるだろうと何度か反芻していましたが、ラスト数ページまで来て読みとおしてよかったと素直に思いました。ただラストはきちんと互いを認識して会ってくれたら個人的に一番のハッピーエンドでした。その後どうなったか描き切らないのはよくあるパターンですが、最後まで描き切る強いメッセージ性が欲しかったです。
 とにかく描写がストレートで頭にスムーズに入ってきました。薫が失禁したシーンなどはシンクロ度が高くて少し震えを感じました。久しぶりに帰った家で自分が妊娠したことを告げるシーンも残酷で目茶苦茶に近いけれど納得できる行為でした。きっと彼女は凡庸に幸せな人生は送れないと思うけれど、短くても母京子に愛された時間の記憶は生まれてくる子にもきっと幸せな時間を蘇えさせると思います。