楊逸(ヤン・イー)/時が滲(にじ)む朝

話:■■■□□、次回作購入意欲:♪♪♪

時が滲む朝

時が滲む朝

 先日日記に書いたように、今回芥川賞を受賞した中国の作家が日本語で書いた作品です。芥川賞はそもそも無名あるいは新人作家を対象にした賞で、しかも短編・中編(だいたい150枚程度)を対象に選考されているらしいですが(Wikipedia)、まさにその候補としてはふさわしい作家であり作品のようです。新聞の記事では「圧倒的な筆量」と書かれていたので思わず1000p越えの大作を想像して書店に行ったら150p程度でラノベなみの行間といういつものペラ本で拍子抜けしたのは正直な感想。
 ともあれ、中身を読んだ印象は、確かに翻訳本でもないし日本人作家ではない言葉の使い方*1や、やや大味な構成や掘り下げは大陸の風を少し感じました。帯*2に書かれているように天安門事件や香港返還などキャッチーな出来事を絡めているものの、主人公の中国民主化を夢見る青年は天安門の現場に行っただけで事件とは別のところで起こした喧嘩により苦労して入った大学を退学になるはめになります。大きな事件というとこのくらいで後は率直に言って、まったりした展開でした。すごい作品ではなかったですが他の候補作と比べたら受賞は順当だったかもしれません。いずれにせよ現在中国本土内に住まない在日の作家が今後どの程度リアルな中国を描けるか興味深く、活躍できるかどうかはそれ次第じゃないかと思いました。

*1:感じたのは読み始めだけでその後は特に気になりませんでしたけど

*2:受賞する前に売られていた初版を買ったので帯は受賞後変わるかもしれません