大道いむた(おおみちいむた)/いけない いもうと

絵:★★★★☆、話:■■■■■、愛:♥♥♥♥♥、次回作購入意欲:♪♪♪♪♪

いけないいもうと (MDコミックスNEO 25)

いけないいもうと (MDコミックスNEO 25)

 表紙絵見ればお分かりの通り、旧PN:くどうひさし氏の新刊。8月新刊チェックの時名前を見てすぐに思い出せなかったのですが、Vol1から新PNで掲載されてた雑誌を何度も読んでるというのに相当いい加減な記憶です^^;

 司と桃園書房がなくなる話を書いてもう1年以上になりますが、その年末にメディアックスのコミック激ヤバ!に大勢TSUKASA COMICS系作家が掲載されて、なんだか嬉しかったことを思い出します。最新号の激ヤバの巻末に先日新刊が出た黒木秀彦氏自身の宣伝漫画が掲載されているのですが、そこに当時の話が載っていました。メディアックスに転職した担当さんが声をかけてくれたみたいですね。くどう氏もそんな作家の一人だったと思いますが、PNも一新しての初単行本となります。
 表紙絵はイマイチかも。客観的に見て、初見の人がこの絵でエロを期待して買うかどうか考えるとかなり微妙。実際本編もこの絵柄なので全く嘘偽りないのですが、これだけで判断して買わなかったら絶対損をする作家のひとりです。ナンセンスな漫画やシュールな作品も描かれるのですが、エロマンガ的日常性を作品の中にうまく構築されてて、いきなりエロシーンから始まってもすごく自然な流れを感じるし、登場人物の表情や気持ちがシンプルな描線でもしっかり伝わる描写力にいつも満足しています。顔を赤らめるのにトーンを使う表現がこの作家の特徴のひとつですが、目線の使い方や、イキそうな時に眉をキュッと寄せた、しかめ面をうまく表現に活かしているのもこの作家の素晴らしい点だと思います。それでも、AV的なエロがないので、そういうエロ目的だけで買うには物足りないでしょうね。
 さて、今回の本はタイトルどおり、妹モノの作品が半分を占め、どれも兄妹のお話。前作が「妹バカ一代」とタイトルに妹の文字が入っている割りに1作しか収録されてなかったのは拍子抜けでしたが今回は偽りなしです。前半がほとんどが妹モノであるだけでなく比較的リアルな展開を重視したストーリーになっているのに対して後半はコメディタッチのものやシュール系の作品があり、1冊でいろんな作品を楽しむことができるようになってます。お気に入りのひとつは「若葉のころ」という作品。引っ越し先で偶然あこがれだった先輩と再会。友達に運命的な出会いだよとあおられ、おまけに隣の部屋に住んでいることもわかり、浮かれ気分で手料理をごちそうしようと待ち構えていた矢先、壁越しに女のあえぎ声が・・・。実はその後ハッピーエンドを迎えるのですがヒロインの心が伝わるすごく気持ちのいい作品でした。昭和の香り漂う世界観*1も雰囲気にぴったりだし、観葉植物を時間帯で置き場所を変えたり、ぬぎ散らかした服や、食卓を少し脇にどけて布団を敷いているところなど人物以外の隅々まで気配りの届いた描写に高い完成度を感じました。その他の笑いどころ満載のコミカルなお話も含めて全作品ハイレベルな出来に大満足です。
 最後に、最終話で亀(?!)が登場するのですが、絵柄こそ違いますが、かるま龍狼氏とも共通するセンスがあることに気づきました。かるま氏はこれを亀とはせず犬に見立てるところが更にスゴイ点といえますが、違うと思ってても好きな作家にはどこか共通性があるみたいです。

*1:作中の文庫本が出た当時なら昭和の終わりということになりますが