著者:葉村哲、イラスト:七草/この広い世界にふたりぼっち

話:■■□□□、イラスト:★★★☆☆、愛:♥♥♡♡♡、次回購入意欲:♪♪♪

この広い世界にふたりぼっち (MF文庫J)

この広い世界にふたりぼっち (MF文庫J)

 MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。ヒロインの少女咲希(サキ)に関して、言葉や行動から受ける印象が薄っぺらい気がして最後まで好きになれなかったのが大きな問題だと感じましたが、登場人物のキャラクタ性(見た目)や世界観は嫌いじゃありませんでした。家庭不和やいじめなど健全ではいられない環境に居たことは紛れもなく不幸。しかし、咲希は誰もが羨む美貌に対してそれを意識していないようなセリフを吐き、進んで孤独でいるにも関わらず、ひとりで生きていける強さも経済力もない、つまりは、それを身につける努力を何もしていないで16年も過ごしてきただけ。その咲希と出会った狼の月喰いも森の中で異端として扱われ、やはり孤独を感じて生きてきたけれど、強力な力を生まれつき与えられ、やはり努力をしていない点で似ており、結局二人とも、自分は美しい、あるいは強いんだからと孤独でいいやと考えてるように見えてしまいました。その後、魔法使いが出てきて咲希も努力なしに強さまで手に入れることになるわけで、まあ、ふたりぼっちになるべくしてなったという意味でつまらない展開。もう少し葛藤みたいなものが感じられたら主人公に感情移入もできたのですが、孤独を感じながらも食いっぱぐれることもなく生きてこられて、お手軽に力も手に入れて、更に何かを望む。それを悪いとはいわないけど、少なくとも私には魅力に欠ける主人公でした。他のキャラクタも少々破綻した行動まで起こしているにしては、その原動力がどれも薄っぺらい感じがしたのでこの作家の本質的な感性なのかもしれません。極端な例を挙げると、何かで怒られた時に、自分が正しいのに何を言ってるんのこのバカは、と考える人と、もしかすると自分のことをもっと成長させようとして怒っているのかもしれないと考える思考の深さを持てる人がいるわけですが、明らかに前者寄りの登場人物ばかりだったと思います。まあ、素材は悪くないので続編出ればもう一度くらいは読んでみようと思ってますけど。