支倉凍砂(はせくらいすな)/狼と香辛料 IX 対立の町<下>

話:■■■■■、挿し絵(文倉十):★★★★☆、次回購入意欲:♪♪♪♪♪

 ようやく下巻を読み終わりました。上巻が出てから時間が経ちすぎていたので最初はかなり話の筋を忘れていたのですが、下巻を読んでるうちに記憶はよみがえり、一から読み返す必要はありませんでした。今回ホロはロレンスの心の支えというか恋女房(古い言い方ですが)のような役回りでしたが、彼女の存在があまりに大きなリスク回避の保険として機能してしまい、過去の作品で感じたほどのハラハラ感があまり感じられなかったように思います。最後の最後にはホロがなんとかしてくれる(もちろん無傷じゃないだろうということは明記されていますが)と読者に感じさせるのはあまりよくないと思いますが、リスクバランスばかりで利己的に動いているだけではドラマティックじゃないので、その辺の味付けが難しいでしょうけどよく書けていると思います。ストーリーは上巻を読み終えた後に期待したようなシリーズ最大規模の大きな商戦に発展し、クライマックスのどんでん返しや伏線も効いて、大変おもしろかったです。また、ラストでエーブがロレンスに返した授業料(もちろんお金じゃない)によって間違いなくロレンスはホロの嫉妬でひどい目に合うわけで、それは、少し仲がよすぎるホロとロレンスに対して、嬉しくもあり羨ましくもある読者や作者の思いを形にしてくれたかのようで、気の利いた演出だったと思います。いい作品でした。