薬丸岳(やくまるがく)/虚夢

話:■■■■■

虚夢

虚夢

  読む気満々だったのに長く積み本になってた一冊です。いつもと変わらない日常に突如降りかかった凶行で奪われた愛娘の命。犯人は統合失調症、いわゆる精神分裂症。刑法39条に守られ、3人の命と9人の重傷者を出しながら検察は不起訴。行き場のない怒りの中で背中を刺されながらも辛うじて一命をとりとめた妻の佐和子が少しずつおかしくなっていく。結局子供を失い、近くにいながら助けられなかった夫 三上は、佐和子と別れ、4年の歳月が流れる。そこに病院で隔離されていたと思っていた犯人の藤崎を見たと佐和子から連絡が入る。ところが佐和子のことを知るにつれ以前の勤め先でいない男の姿が見えると騒ぎナイフを隠し持つなどの異常行動を見せ、結局医者の診断によると、原因は犯人と同じ統合失調症。妻が見た男が本当に藤崎だったのかどうか疑問を抱きながらも娘を奪われた怒りも支えになり、捜索が始まる・・・。というのが物語の導入部分。あまり先読みしないで読んだというのもありますが、クライマックスでいろいろ真実が明らかになる度、驚きの連続でした。個人的にも39条には嫌悪感ばかりがあったのですが、この本を読んで間違いなく統合失調症に対する理解は増したと思うし、責任能力については今後もっと議論する余地があるなと考えさせられました。
 と、まじめで重い話に考えさせられつつ、札幌のキャバクラ事情もわかり不謹慎ながらそっちの方面も興味深く読めました。ダウンタイムなんてものがあるんですね。一度くらいは行ってみたいなぁ。