橋本和也/世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫)

世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫)

世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫)

話:★★★☆☆、絵(イラスト:さめだ小判):★★★☆☆
 こちらは第13回電撃小説大賞の金賞受賞作となりました。正直涼宮ハルヒ神様家族の影響を受けているというのが第一印象です。世界を簡単に滅ぼせる力がきちんとした訳もなく一家族に集中するという設定は一言で何でもできる状況ということですが、世界平和のための行動は簡単なエピソードしかなく、結果的には内輪騒ぎで終わりました。もちろん世界でトップクラスの強大な力が集まっているのだからそれも必然かもしれませんが、これも完全に新しい感覚ならよかったのですが、新鮮味に欠ける展開でした。あと、刻人は結構顔や姿のイメージが文章からできましたが、他の登場人物は挿絵がなかったら最後までイメージが固まりませんでした。実際最初に挿絵をみたとき、それまで作りかけていたイメージとの違いが大きく、違和感ありましたので。この点は私の読み取り能力の問題もあるでしょうけど。
 全体を通して、もう少しサブトピックスが充実していたらよかったのですが、メインストーリー以外、単純すぎる話にとどまっているは物足りない気がします。実際、読後に頭に残ったのは生命を操る力を手にしたら神様に殺されるということを軸にしたメインストーリーだけですから。柚島さんに急に能力が身に付いた意味も最後には説明はあったものの、神様にそんなことができるなら、最初から美智乃や軋奈の能力を奪えばよかったのでは?と逆に疑問を感じます。能力は与えられるけど奪えないってのも変な話ですし。娯楽小説ですから変なリアリティ追及は必要ありませんが、話のコアだけは納得させる設定をしっかり描写しておいてほしいと思いました。
 少し批判的な感想が多かったのですが、ライト感覚にあふれたまさにラノベ的小説という意味ではよかったんではないでしょうか。ただ、破天荒な設定と登場人物で固める以外のプラスアルファがあればもっとよかったということです。イラストは可も不可もなく萌要素はほとんどありませんでした。七美はもっといじってやればおもしろくなるキャラだとは思うのですが、興味ある宇宙での活躍などを適当に流しているのは結局のところ作者の力量不足ではないかと思いました。