塩山芳明/東京の暴れん坊―俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画

東京の暴れん坊―俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画

東京の暴れん坊―俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画

 ばっさり斬り捨てるにもほどがあると、本来悪政などには厳しいはずの自分ですら冷や冷やしながら読める楽しいエッセイです。お目当てはもちろん工口漫画業界ネタですが、劇画家の描写のところでは、そこまで言うかと想像を超えた毒舌(というか、ほんとにそれが真実なんでしょうけど)に失礼ながら笑いそうになりました。私もぎりぎり劇画工口漫画が本屋に置いてあった時代を知ってるのですが、私の言葉で言わせてもらえば、あれはJPopに対する演歌と同じなんですよ。演歌歌手は、どさ回りして頑張ってるし、年に一度は紅白っていうお祭りがある分、マシだろと思うかもしれませんが、そういう話をしてるわけじゃなく、私には全く興味がわかないという点で同じなんです。ロマンポルノだってもうちょっと垢ぬけた話を描いていただろうに、工口劇画の話ときたら一部の有名作家を除けば、どうやったら楽しめるのかわからない話ばかり。根性、人情ばかりを唄われてもポカンとして何も感じない演歌と同じなわけです。同調できる要素がない。
 この塩山氏の話を読んでいると、結局こういうダメになっていった劇画家と官公庁の連中がまったく同レベルにしか見えず、普段声を荒げることがない上品*1な私としては代わりに言い放ってくれて、スッとしました。

*1:結局のところ無関心