犬村小六/とある飛空士への恋歌

話:■■■■□、イラスト:■■■■□、愛:■■■□□、次回作購入意欲:■■■■

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

 続編ではないのですが、「とある飛空士への追憶」に続く『飛空士』シリーズということで世界観は似た雰囲気になっています。ただし、登場する国や人物、ストーリーは全て新規。ニナという風を操る少女の力を利用した革命勢力によって王政崩壊が起こり父(皇王)と母(皇妃)は結局処刑されるものの、第一皇子カルエル(本名カール)は母との約束でもあった「空を飛びたい」という言葉で生き延びることになります。引き取ってくれた先は父親と3人姉妹の暖かな家庭で、憎しみを抱えた暗いムードの導入部でしたが中盤からは少年少女でも心を痛めることの少ない展開になっていました。この方の既刊には少し残酷な描写が出てきたことがありますが、そういう部分はだいぶ制御されてる感じです。それでもカルエルが深く傷つくことになった、皇妃が監禁されてた牢から運び出されるときの描写は、私がイメージしている犬村氏らしさが出ていたと思います。その後、物語はイスラと呼ぶ空飛ぶ島に飛空士として住み空の果てを見つける旅に出ることになるわけですが、そこに現れるクレアは少々わかりやすすぎました。最後に、不満というほどでもありませんが、全然この巻だけで終わる気のない構成なのだから『第1章』と書いて欲しかったですね。読み切りを期待して買う人だっているわけですから。続ける苦労もあるでしょうけど、1冊を書ききる作品が私は好きですし。