十文字青(じゅうもんじあお)/ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜

総評&次巻期待度:★★★★

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

 いい小説でした。あまりラノベでは描かれない負の感情に溢れてましたが、「ぷりるん」の言葉は沈んでいく主人公だけでなく読者のキモチをも下支えし、気持ちのいいラストまで連れていってくれた気がします。ハイテンションで明るく楽しいノリばっかりのお話だけじゃなく、こういう新しい感覚のお話がもっとラノベのジャンルでも出てきて欲しいと思います。
 簡単にストーリーを紹介すると、ラブラブ光線がまぶしい妹のうずみと暮らす主人公ユラキは、気になる女の子桃川みうと初デート。帰りにエッチに誘われるも、実は昔姉から受けたトラウマでセックスに対して臆病(?)なため逃げ帰ってしまう。数日後みうは知り合いの男子と何事もなかったように約束があると答え、しかも自分は誘われても拒否してしまったエッチをなんでもないことのようにしている様子。これが貞操観念の強いユラキにとっての悩みの始まり。その後、自由奔放に旅をしていた姉が戻ってきて衝撃の事実を伝えられたり、強引にキスをされたところを見た妹うずみがその後男とつきあい始めたらしくそのまま家にも帰らなくなったりと、家庭もぼろぼろ。そんなユラキのいつも傍に居るのが、何を聞いても「ぷりるん」としか答えない女の子。救いを求めるように人間の言葉を返してよと懇願するユラキに、「ぷりるん。ぷり、るん」と返す少女。昔からいろいろ奇行に走ってたとはいえ元々普通に会話をしていたのに、高校に入学して間もなく、「今日から、ぷりるん、しか言わないことにする」と宣言してずっとこの調子。読んでる私も、なんだこいつはと思わせてしまう奇行ぶりです。はじめは文芸書ではありえないハチャメチャな世界にする気か思いながら読み進めていましたが、結果は冒頭の感想。なお、那智部長という脚のきれいな先輩も登場しますが、少し彼女の存在理由が薄い印象。役割がなかったわけではありませんが..。
 最後に、サブタイトルに『序説』とあるわけですが、これはシリーズとして続くんでしょうかね。なんかいろいろ解決したような気もするししてないような気もするし...。これで完結でも何ら不満はありませんが「ぷりるん」の言葉で違う世界とつながるのもおもしろいかなと思うので続編というかシリーズ化を待ってみたいと思います。