河野裕(こうのゆたか)/サクラダリセット

総評&次巻期待度:★★★★

 桜良田(さくらだ)という街でのみ自分の力を認識できる能力者たち。もはやなんでもありの魔法・超能力ものですが、この作品のようにかなり特殊であり、かつ、ある種、作者のご都合的な制限付き能力は作者に筆力がないと陳腐な話で終わってしまいます。そんな不安も抱えつつ読んだ作品ですが、よく書けてたと思いました。話の中心になるのが、時間を三日分巻き戻す「リセット」能力を持った美空(みそら)。ただし、自分自身がリセットしたことを憶えてないので、それをサポートするのが、世界がリセットされても記憶を保持できる能力者ケイ。仲間が死のうがどうなろうが都合が悪いことが起きたらリセットして、そうならないようにケイの記憶に従って行動すればよいという、究極のコンビ。こういう能力者を監視する管理局のもと、高校の「奉仕クラブ」に所属していろいろな依頼を解決しているというのが舞台設定。他にも、街中の猫の意識と共有できる能力者野ノ尾(これはうらやましい)や、指定の時間に声を届けられるという、本編にあるようにめざまし以外使い道がわからない能力を持つ中野(いらない)、そして事件の発端者であり、その後、自称(?)最強であることを明かす能力者村瀬(あの抽象的な言葉が有効になるのは確かにすごい)と新鮮な能力者揃い。事故で死んでしまった猫を生き返らせて欲しいという依頼で始まった事件ですが、その後本当の狙いが明かされていくという作りになっています。ちょっとだけイラストと作中の人物像が私の中ではぴったり来ませんでしたが、それ以外は帯に書かれていた程度の評価はできる作品だと思いました。いや、ちょっと褒めすぎじゃないか?