葵東(あおいあずま)/魔法の材料ございます

総評:★★★★★

 これはいい作品。登場する女の子のキャラはまたかと思わなくもないですが、強すぎる印象を与えない主人公の活躍ぶりが心地よい。戦う方法や戦う様を魅力的に表現できる作家の作品は無意味な強さのインフレを起こす心配を感じないので、続き物を読んでみたい気にさせてくれます。ただし、ただの平凡な男が運を使い切るような工夫だけで乗り切ってるわけではなく、常識はずれのあることに特化した能力を持っているので、魅せ場はたっぷり作ってくれます。そんな彼をもってしても、まともに勝つことは叶わない強大な力をもつドラゴン。世界がいいチカラのバランスで作られていると思いました。ラストでヴァルヘルト(山をも砕きし最強の魔導師、という通り名を持つ英雄)に気づいた事実には私も思わず、おぉ、と唸ってしまいました。かなり苦労して出版にこぎつけた雰囲気があとがきから漂ってるし次回作はあってもすぐには出ないかも。期待はしておきます。
(LINK)GA文庫大賞 新人情報局インタビュー記事