日日日(あきら):著者、みことあけみ:イラスト/みにくいあひるの恋

総評:★★★★★

みにくいあひるの恋 (MF文庫J)

みにくいあひるの恋 (MF文庫J)

 名前だけは知ってましたがこの作家の作品を読むのは今回が初。恋をすると死んでしまう世界のラブストーリーというだけでぐっと興味が湧いてくるわけですが、かなりおもしろく読ませていただきました。本来あまり興味の湧かない見た目が女の子のような男子キャラが主人公のひとりなんですが、好感の持てる人物像だったことは作品に対する印象に大きな影響を与えたと思います。
 冒頭に書いたような謎の病気のため、本来恋という感情が生まれないはず*1の兄妹(姉弟という関係が登場しなかったのはなぜ?w)で結婚することが普通という近親相姦エロマンガワールドな設定ですが、そこは健やかに成長している年齢層がメイン読者ですから、生まれたすぐの病院で血の繋がってない赤ちゃん同士を交換して遺伝子的にも問題ないようにしているという骨抜き設定が追加。エロマンガ云々は冗談としても、実際問題血が繋がってないと分かっているもの同士を兄妹にする社会も正常に発展すると思えないので、ここは敢えて、血が繋がったもの同志で未来につなぐという気合いの入った設定にしたほうが世界観がより難解で印象に残るものになったかも。もっとも恋をして実際に人が死んだのは少し過去の話になっていて、こういう兄妹政策の効果もあったのか最近は病気自体が弱まり、自由恋愛をしようという声も高まっているとか。早くもぬるい設定を導入しているところがちょっと残念でしたが、ヒロインのお話はよかったと思います。
 驚いたのはこのお話がシリーズ化するらしいこと。このまま終わっても気持ちのいい作品だったと思いますが、本気でいいストーリーを展開し続けてくれるなら楽しみにしたいと思います。

*1:えっ?! と驚くような価値感が前提の社会