久住四季(くずみしき):著者、カツキ:イラスト/鷲見ヶ原(すみがはら)うぐいすの論証

総評:★★★

鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫)

鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫)

 ラノベで推理ドラマ風の作品を読むのは初めてになります。薄い短編が多いラノベにしては300p後半の量の作品である点だけでも評価したいと思いました。ミステリーとしての作りは正直まだ甘い(というと随分偉そうですが実際論理的な推論構築がそんな印象)と思いましたが、冒頭からいきなり悪魔が登場していたりと、ただの推理ミステリーものじゃない雰囲気のストーリーは嫌いじゃないです。冒頭に登場して以降、なかなか悪魔が登場しないので、あれは単なる夢などの回想だったのか、それともそういう非現実世界のキャラクタも登場するお話なのだろうかと、最後のほうまで判断つかないようにしてたのは興味をもたせる良い効果があったと思います。ふと、某大作家の名作推理小説占星術殺人事件』という作品を思い出しました。あの作品もその作家の作品としては初めて読んだものだったので、そもそもこの作家は現実世界を前提にした逃げのないトリックを用意しているのか、悪魔などがひょこっと出てきて不可解な事件を起こすファンタジー作家なのかがわからず、そんな懐疑心が作中の事件をより難解にしておもしろくしてくれました。この作品がそれと同等の完成度とはさすがに言えませんが、初読みの作家の作品でこういうテイストのストーリーを読めたことはラッキーだったと思います。既刊がかなりある作家のようですので、また書店で見つけることがあれば読み広げてみようと思います。