F4U(えふよんゆう)/今夜のシコルスキー

絵柄&魅力:★★★★☆、設定&話:★★★★☆、愛&エロス:★★★★☆;、総評&次巻期待度:★★★★★

今夜のシコルスキー (メガストアコミックスシリーズ No. 205)

今夜のシコルスキー (メガストアコミックスシリーズ No. 205)

 2/19には一般向けでも「文化部をいくつか(1)」を発売予定のF4Uさんですがエロで待望の初単行本が出ました。タイトルからは、おかず提供に徹した内容が期待できますが、実際それに応える内容でした。カバー下の表紙には作者挨拶があり、病んでる自画像キャラが笑いを誘い、カバーの折り返しには4つの野望(?)が書かれており、単行本化(これは達成)、アニメ化、パチンコ化に続く項目がこれか…と涙を誘い(笑)、妙な雰囲気を感じさせる作家です。
 本に収録の作品は全9話でいずれもメガストアに掲載のものですが、個性が強く出ていたせいか、どれもよく覚えていました。ストーリー的には病んだ展開が少なくはないのですが、作者のセンスのおかげで不快感が生まれるよりもエロ描写に引き込む力のほうが勝っていた気がします。仕事として表現しているに過ぎないんだということはわかっているつもりなんですが、どうしても作者のF4Uさんがかなりのチン○大好き女子としか思えないんです。凶暴なチン○の形も皮膚感も崇拝しているように丁寧に描かれ、舐めあげるシーンは絶対的な服従心に溢れ、挿入シーンでもチン○が今どんな形になって肉壁を割って入っているのか、それを脳内の目で必死に追いかけようとした結果、大胆な断面や内部スコープでアップにする独特の見せ方が生まれている気がします。マン○の描写も吸い込まれるようなヒダや、吸い付いたら離れない密着感ある穴で、チン○を招き入れる最高の状態を演出しており、愛情なくしては描ききれないようなパワーを感じました。写実的な描写がまったくないわけではないのですが、いわゆる印象派のような作画が私の妄想をいい方向に膨らませてくれたと思います。性器描写だけで抜いてやろうという力強い作者のメッセージも感じ取れ、ほんと将来が楽しみな漫画家です。
 更に、心理描写やセリフも非常に上手いというかおもしろいセンスを感じました。ネームの量はかなり抑えられてるけど十分にストーリーはわかるし、登場人物の気持ちも伝わってきます。巻頭作品の「誰が為か……」は、幼なじみの『ようくん』と『まい』がまいの彼氏の家庭教師に処女を捨ててこいと命令されてエッチするお話なんですが、口でイってしまった後、まいは躊躇無く飲み干して「飲んじゃった…」と一言*1。ようくんはそれを見てショックを受けながらも「お前って…ホントにもう」と、おでこにキス。この辺の気持ち、わかるなぁ…。続けて、「こっちはこういうの初めてなんだからな」「うん…」「比べたりするな…よ」「うん」「うん…」というシーン。「うん」を繰り返すところに彼女の心理状態を感じさせるんですよね。細かいことのようなんですが、根本的な設定はエロマンガでしかあり得ないようなものであっても、心理的な動きが飛躍せずに描かれていると、ある種のリアリティが生まれるんですよね。この作品は単に不快と感じる読み手もいるかもしれないけど、私はすごく好きな作品でした。ただ鬱になる作品とどれだけの違いがあってこんな気持ちになるのか自分でもよくわからないところはあるのですが、映画で同じストーリーでも監督が替われば名作に変わるが如く、表現者次第だと思いました。
 全作品で語りたいことがあったのですが、ちょっと長くなりすぎたので1話目の話以外は削除。純愛系作品もありますが笑えないお話もあるので多少好き嫌いはありそうです。それでも、この本は是非多くの人に読んで欲しいと思いました。ちょっとしたところに笑いのテイストもあるし、引き出しはたくさん持ってそうです。買う予定はなかったのですが一般向け作品もしばらくチェックしたほうがいいかも。エロでもエロ抜きでもいろんな作品を読ませてほしいと思います。

*1:このときの表情もいい